AI人材が採用できない中小企業の現実的な代替策
「AI人材を採用して、社内にノウハウを溜めてほしい」。経営層からそう言われて、求人票の作成に取りかかったものの、応募がほとんど来ない。たまに応募があっても、希望年収が社内の給与テーブルとかけ離れていて、話が進まない。そんな経験をした現場責任者は少なくないはずです。
実はこの問題、採用活動のやり方が悪いわけではありません。中小企業がAI人材を採用するという選択肢そのものが、構造的に難易度の高い戦い方になっているケースが多いのです。採用という一本道にこだわらず、「社内で育てる」「外部に一部を任せる」「ツールで代替する」という複数の選択肢を組み合わせて考えると、意外と前に進められる場合があります。この記事では、なぜ中小企業のAI人材採用が難しいのかを整理したうえで、採用以外の現実的な代替策と、外部に任せる際に押さえておきたい観点を解説します。
なぜ中小企業はAI人材を採用できないのか
AI人材と一口に言っても、データ分析、モデル構築、既存システムへの組み込みなど、求められるスキルの幅は広く、しかも需要に対して人材の絶対数が少ない状態が続いていると言われています。IT・AI分野の人材需給については、将来的に不足幅が拡大する可能性が各種調査で指摘されており、企業規模を問わず人材獲得の競争は今後も厳しさを増していくと見られています。
この競争の中で、中小企業は給与水準、知名度、キャリアパスの提示力といった面で、どうしても不利な立場に置かれがちです。求人を出しても大手企業やメガベンチャーと同じ土俵で比較され、条件面で見劣りしてしまう構造があります。ここは採用担当者の努力だけではどうにもならない部分なので、まず「採用が難しいのは自社のやり方が悪いからではない」と捉え直しておくと、次の一手を考えやすくなります。
加えて、仮に採用できたとしても、社内にAI人材を評価できる上司や同僚がいないと、その人が何をしているのか誰も把握できず、孤立してしまうという問題も起きやすくなります。採用がゴールではなく、採用した後の受け皿づくりまで含めて難易度が高い、という点は見落とされがちです。
採用以外で選べる3つの代替策
AI人材を正社員として採用する以外にも、現実的に取れる選択肢はいくつかあります。それぞれ向き不向きがあるので、自社の状況に合わせて組み合わせることが前提になります。
- 既存社員のリスキリング:IT知識がゼロではない社員に、AIツールの使い方や簡単なデータ分析の研修を受けてもらい、社内の「分かる人」を育てる方法です。即戦力にはなりにくいものの、業務内容を理解している社員が学ぶぶん、現場の課題とAI活用の接点を見つけやすいという利点があります。
- 外部の専門人材を部分的に活用する:フルタイムの採用ではなく、業務委託や副業人材として、特定のプロジェクトだけ関わってもらう方法です。初期の設計や診断だけを依頼し、運用は社内で巻き取るといった使い方がしやすくなります。
- AIを組み込んだツール・サービスを導入する:自社でモデルを構築するのではなく、すでにAI機能が組み込まれたSaaSやツールを使う方法です。人を採用する代わりに、ツールのベンダーがノウハウを持っている状態を借りる、という考え方に近くなります。
どれか一つを選ばなければならないわけではなく、研修で底上げをしつつ、難しい部分だけ外部に頼る、という組み合わせ方が現実的な落としどころになることが多いです。
外部に任せる際に生まれる「もう一つの壁」
採用以外の代替策として外部の専門人材やツール導入を選んだ場合、次にぶつかりやすいのが「何をどこまで任せるか」という線引きの問題です。ここが曖昧なまま話を進めてしまうと、後になって「思っていたことと違う」というすれ違いが起きやすくなります。
例えば、ツール導入であれば、自社のどの業務データをどう使ってほしいのか、どこまでをツール任せにして、どこからは人が判断するのか、という要件の整理が必要になります。この整理をせずに「AIでいい感じにしてほしい」という曖昧な依頼のまま発注すると、見積もりの前提条件が食い違い、後から追加費用が発生するという事態にもつながりかねません。曖昧な依頼は、採用でも外注でも同じようにつまずきの原因になる、という点はメモしておきたいところです。
この要件の整理をどう進めればいいか分からない場合は、要件定義を丸投げしたくなる心理とその代償でも扱っているように、まず社内で「何に困っているか」「何を解決したいか」を言葉にする作業から始めると、外部とのやり取りがスムーズになります。また、AI開発特有の品質管理の難しさについてはAI開発は品質が読めない、その不安の正体とはでも整理していますので、あわせて確認しておくと判断の助けになります。
社内に相談できる人がいないときの考え方
AI人材もいない、相談できる社内の詳しい人もいない、という状態だと、どこから手をつけていいか分からず立ち止まってしまうことがあります。そういうときは、いきなり大きな投資や採用を決めるのではなく、まず小さな範囲で何が課題なのかを洗い出し、その課題を解決するために「人を雇う」「社員を育てる」「外部に頼む」のどれが一番早いかを比較してみると、判断がしやすくなります。
独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公開している「DX白書2023」では、デジタル人材の「量」の不足を感じている企業の割合が日米で比較されており、日本企業における人材不足感の強さと、外部人材・外部組織との連携の重要性が指摘されています。社内で全てを抱え込む必要はなく、外部の専門家や開発会社に部分的に相談するという選択肢を早めに視野に入れておくことが、結果的に遠回りを避けることにつながります。外部に相談するという選択肢も視野に入れておくと、判断の幅が広がります。
まとめ
- 中小企業がAI人材を採用できないのは、採用活動のやり方の問題というより、人材需要と供給のバランスという構造的な要因が大きい
- 採用以外にも「社員のリスキリング」「外部専門人材の部分活用」「AI組み込み済みツールの導入」という代替策があり、組み合わせて使うのが現実的
- 外部に任せる場合は、何をどこまで任せるかという要件の整理が不可欠で、ここを曖昧にすると後から追加費用やすれ違いが生まれやすい
執筆
サイバーコネクト編集部
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監修
金森 隼
AIプリンシパル
株式会社サイバーコネクトで、AIを活用した開発フローの運用に携わる。AIが生成したコード・成果物は必ず人間がレビューする方針のもと、AIと人間の役割分担の設計・運用を担当している。AIによる業務基幹システムの構築、AI駆動開発されたシステムの保守運用を得意領域とする。
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