現場責任者がDX丸投げされて困った時の相談先の探し方
「システム化できないか、一度検討してみて」――経営層からそう言われて、誰に聞けばいいのか分からないまま数週間が過ぎている。そんな経理部長・営業部長は少なくないはずです。社内にIT担当がいるわけでもなく、かといって開発会社に電話一本かける勇気もない。振られた側としては「何をどう調べればいいのか」も分からず、焦りと戸惑いだけが積み重なっていく状態ではないでしょうか。
整理してみると、この困惑の正体は「誰に相談するか」を決める前に「何を相談するか」が固まっていないことにあります。相談先探しは、実は準備の順番さえ間違えなければそれほど難しい作業ではありません。この記事では、社内で抱え込まずに外部へ相談するまでの具体的な手順と、相談先ごとの向き不向き、そして相談時によくあるつまずきポイントを順に解説します。
相談する前に、社内でこの3つを整理しておく
外部に相談する前にまずやっておきたいのは、社内側の情報整理です。ここが曖昧なまま相談窓口に駆け込むと、話が噛み合わないまま時間だけが過ぎることになります。
- 困っていることを箇条書きにする:「DXが必要」ではなく「請求書処理に想定以上の工数がかかっている(あくまでイメージですが、月に数日分の作業時間が積み上がっているようなケース)」「見積書の作成が属人化していて休むと止まる」など、具体的な作業レベルで書き出す
- 現状のやり方を簡単に書き出す:Excelで管理しているのか、紙とハンコが残っているのか、誰がその作業を担当しているのかをメモする
- 予算感と決裁ルートを確認する:経営層がどの程度の予算感を持っているか、最終的に誰が決裁するのかを事前に確認しておく
この3つがあるだけで、相談先との会話の質は大きく変わります。相手も「何を解決すればいいか」がイメージしやすくなるので、的外れな提案が返ってきにくくなります。ここは、初回の打ち合わせをスムーズに進めるための実務メモとして手元に置いておくといいところです。
相談先の候補を洗い出し、向き不向きで絞り込む
相談先には大きく分けていくつかの型があります。それぞれ得意分野やコスト感が異なるので、自社の状況と照らし合わせて選ぶことが大切です。
- 既存の取引先ベンダー:会計ソフトやITインフラを既に導入している会社があれば、まずそこに聞いてみるのも一つの手。既存システムとの連携を踏まえた提案が期待できる
- 公的機関の相談窓口:商工会議所や自治体のIT導入支援窓口では、無料または低コストで初期相談に乗ってくれる場合がある。中立的な立場からの意見が聞ける
- システム開発会社:具体的な開発を伴う場合は、開発会社に直接相談する選択肢もある。ただし、この段階でいきなり「見積もりをください」と依頼すると、こちら側の要望が固まっていないため精度の低い見積もりしか返ってこないことが多い
ここで気をつけたいのは、相談先を選ぶ段階と、実際に発注先を決める段階を分けて考えることです。相談はあくまで「自社の課題を整理する壁打ち相手を探す」段階であり、いきなり契約先を決める作業ではありません。この切り分けができていないと、複数社から話を聞いているうちに情報が混ざり、比較すらできなくなってしまいます。
つまずきやすいポイントと、その回避策
相談を進める中で、多くの現場責任者が同じところでつまずきます。あらかじめ知っておくと、無駄な時間を減らせます。
失敗パターン1:課題を整理せずに相談してしまう 「DXをやりたいんですが、何ができますか」という漠然とした聞き方をすると、相談先も一般論しか答えられません。結果として「結局何も決まらなかった」という状態で終わりがちです。前章で挙げた3つの整理を先に済ませておくことが、この失敗を避ける一番の近道です。
失敗パターン2:複数社に同時に声をかけすぎる 比較のために複数社へ相談すること自体は悪くありませんが、要件が固まっていない段階で3社4社に声をかけると、各社への説明対応だけで時間を取られてしまいます。まずは1〜2社に絞って壁打ちし、方向性が見えてから改めて見積もり依頼先を広げる、という順番の方が現実的です。
失敗パターン3:見積もりの前提を揃えずに金額だけ比較する 相談が進み、いよいよ見積もりの段階に入ると、今度は別の壁にぶつかります。会社によって見積もりに含まれる作業範囲が異なるため、金額だけを並べても正しい比較になりません。実はこの見積もりの精度は、相談段階でどれだけ要件(何を実現したいか、現状どうなっているか)を伝えられたかに大きく左右されます。見積もりの精度は事前準備の質と比例すると考えておくと、相談から発注までの流れが整理しやすくなります。要件定義がなぜ見積もり前に重要なのかについては、別の記事でも詳しく扱っているので、あわせて確認しておくと安心です。
社内で完結しない場合の考え方
ここまでの手順を踏んでも、「そもそも何を課題として言語化すればいいか分からない」という段階で止まってしまうケースもあります。これは決して珍しいことではなく、社内にDX推進の経験者がいない中小企業では自然な状態です。
そういった場合は、最初から開発会社に「要件整理の壁打ちだけでも可能か」と聞いてみるのも一つの方法です。開発会社の中には、正式な発注の前段階として、現状のヒアリングや課題の言語化を手伝ってくれるところもあります。この段階では契約や費用が発生するかどうかを最初に確認しておくと、後から想定外の請求に驚くことを避けられます。ここは、相談を申し込む際に一言添えておきたいポイントです。
まとめ
- 相談先を探す前に、社内で「困りごと」「現状のやり方」「予算感・決裁ルート」の3つを整理しておくと、相談の質が大きく変わる
- 相談先には既存ベンダー・公的窓口・開発会社など複数の型があり、まずは壁打ち相手として1〜2社に絞るのが現実的
- 見積もりの精度は事前の要件整理に左右されるため、相談段階から「何を実現したいか」を具体的に伝える意識を持っておく
執筆
サイバーコネクト編集部
誇張や決めつけを避け、現場で実際に判断材料になる情報だけをお伝えします。
監修
木村 真之
株式会社サイバーコネクト 代表取締役社長
2021年11月に同社を設立。
まずはお話をお聞かせください。
要件が整理されていない段階でもご相談いただけます。
情報の取り扱いと免責:本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の状況に対する助言ではありません。 統計・数値等は出典を明記したもの以外は掲載していません。内容は公開時点の一般的な傾向を示すものであり、 実際の発注・契約にあたっては個別の事情に応じて専門家・取引先とご確認ください。