II発注構造・費用の仕組み

SIer・フリーランス・自社開発、契約形態で何が変わるか

公開日:2026年8月21日最終更新日:2026年8月21日サイバーコネクト編集部

「同じような開発なのに、見積もりも進め方も会社によって全然違う」。相見積もりを取った経理部長や情報システム担当の方から、こうした感想をよく聞きます。SIerは高そうだけど安心感がある、フリーランスは安いけど不安、自社で雇うのは大変そう——なんとなくそんなイメージはあっても、その違いがどこから来ているのか説明できず、選び方に迷ってしまうという方も多いのではないでしょうか。

実はこの違いは、単なる「値段の高い・安い」ではなく、契約形態によって誰がどこまで責任を持つかが変わるという構造から来ています。責任の持ち方が変われば、費用の内訳も、トラブル時の対応も、自然と変わってくるわけです。

この記事では、SIer・フリーランス・自社雇用(内製)という3つの発注先を、契約形態という切り口からフラットに整理し、どこに何を任せると何が起きやすいのかを見ていきます。

契約形態が違うと、そもそも何が変わるのか

システム開発を外部に頼む場合、大きく分けて「請負契約」と「業務委託(準委任契約)」という2つの契約形態があります。SIerは請負契約が多く、フリーランスは準委任契約が多い、というのがざっくりした傾向です。

請負契約は、決められた成果物を完成させる責任を発注先が負う契約です。仕様書どおりのシステムが完成しなければ、原則として開発会社側の責任になります。一方、準委任契約は「稼働した時間・作業」に対して費用が発生する契約で、成果物の完成そのものは契約上の義務にはなりません。

この違いは、発注する側からするとかなり大きな差です。請負なら「発注したら仕上がってくるもの」に近い感覚で頼めますが、準委任は「一緒に作っていくメンバーを確保する」という感覚のほうが近くなります。契約を結ぶ前にどちらの形態かを確認しておくと、後々の「思っていた進め方と違う」というギャップを減らせます。

自社雇用(内製)は契約という話からは少し外れますが、責任の持ち方という意味では「完成責任も稼働責任も、すべて自社が引き受ける」形になります。外部に頼まない代わりに、進捗管理も品質担保もすべて社内の話になる、という位置づけです。

請負契約
準委任契約
請負契約と準委任契約の責任の持ち方の違い

SIer・フリーランス・自社開発、それぞれの費用の組み立て方

契約形態の違いを踏まえて、3つの発注先の費用構造を見てみます。ここで大事なのは、「どこが高い・安い」ではなく「その費用に何が含まれているか」という視点です。

SIerに頼む場合

SIerは請負契約が中心のため、見積もりの中に完成責任を負うためのバッファ(仕様変更や不確定要素への備え)が含まれていることが多くなります。また、プロジェクトマネージャーや品質管理担当など、実際にコードを書かない人員の稼働も費用に含まれるのが一般的です。窓口が一本化されているぶん、社内での調整コストは小さくなりやすい一方、その調整機能自体にも費用がかかっている、と捉えると分かりやすくなります。

フリーランスに頼む場合

フリーランスの多くは準委任契約で、稼働時間に応じた費用が中心になります。管理層や品質保証の工程を別途厚く積む必要がない分、単価あたりの費用は抑えられやすい傾向があります。ただし、進捗管理・要件の調整・品質チェックといった、SIerであれば含まれている機能を発注側が自分で担う必要が出てくる場合があります。「安いから得」という単純な話ではなく、社内で誰がその役割を代わりに担うのかという前提とセットで考えたい部分です。

自社雇用(内製)の場合

内製は、外部への発注費用そのものが発生しない代わりに、採用コスト・教育コスト・雇用継続にかかる固定費が発生します。プロジェクトが一つ終わっても人件費は続く、という意味で、単発の開発を頼むケースと比べてコストの時間軸が異なる点が特徴です。長期的に開発を続ける前提があるかどうかで、内製が向いているかどうかの判断が変わってきます。

なぜこのような違いが生まれるのか

こうした費用構造の違いは、良し悪しではなく、それぞれが「リスクを誰が負担しているか」という設計思想の違いから生まれています。

SIerの費用にバッファや管理コストが含まれているのは、完成責任を負う以上、想定外の事態が起きても契約どおりに仕上げる必要があるためです。責任を負う側が、その責任に見合うだけの余裕を費用に組み込んでいる、という構造になっています。

フリーランスの費用が比較的シンプルなのは、完成責任という重い荷物を契約上背負っていないためです。その分、進捗や品質のコントロールという役割が、発注側かフリーランス本人のどちらかに残る形になります。ここが曖昧なまま契約が進むと、「誰が最終確認をするのか」が抜け落ちたプロジェクトになりやすいので、契約前に役割分担を言葉にしておくと後の食い違いを防ぎやすくなります。

内製に固定費がかかるのは、社員という形で継続的な雇用関係を結ぶこと自体にコストが伴うためです。開発が終わっても組織としての人員は残るため、次の開発案件が控えているかどうかで、そのコストが「投資」になるか「余剰」になるかが分かれます。

この構造の違いについては、SIer・フリーランス・自社開発、価格差の正体とはでも価格差そのものに焦点を当てて整理していますので、費用の内訳をもう少し詳しく知りたい場合はあわせて参考にしてみてください。

発注先を選ぶときの判断軸

3つの発注先の違いが分かったところで、実際にどう選べばいいのか、という判断軸を整理します。

  • 完成責任を明確に持ってほしい案件か:仕様が固まっていて、進捗管理をあまり社内で担いたくない場合は、請負契約が中心のSIerが選択肢になりやすくなります
  • 社内に進捗・品質を見られる人がいるか:プロジェクトの中身を発注側でも把握・調整できる体制がある場合は、フリーランスとの準委任契約でコストを抑えやすくなります
  • 開発が単発か、継続的に発生するか:今後も追加開発や改修が続く見込みが高いなら、内製化を検討する価値が出てきます。逆に一度きりの開発なら、外部発注のほうが固定費を持たずに済みます
  • 要件がどこまで固まっているか:要件が曖昧な段階で請負契約を結ぶと、想定外の追加費用が発生しやすくなります。この点は要件定義とは何か。見積もり前に必要な理由で扱っている内容とも関わってくるところです

どれが正解というわけではなく、案件の性質と社内の体制次第で最適な組み合わせは変わります。複数の発注先を組み合わせる(要件定義だけSIerに頼み、実装はフリーランスに頼む、など)という選択肢もあるため、「どちらか一方に決めなければならない」と思い込まずに、案件ごとに柔軟に配分を考えてみるのがよさそうです。

まとめ

  • SIer・フリーランス・自社雇用の違いは、値段の高い・安いではなく、契約形態による責任の持ち方の違いから来ている
  • 請負契約は完成責任を発注先が負う分、費用にバッファや管理コストが含まれやすく、準委任契約は稼働に応じた費用になる分、進捗・品質管理を発注側が担う場面が出てくる
  • 案件が単発か継続的か、社内に管理できる人がいるか、要件がどこまで固まっているかを軸に、発注先の組み合わせを検討するのが実務的な進め方になる

執筆

サイバーコネクト編集部

誇張や決めつけを避け、現場で実際に判断材料になる情報だけをお伝えします。

監修

木村 真之

株式会社サイバーコネクト 代表取締役社長

2021年11月に同社を設立。

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