DXの会議で議事録係にされる現場責任者の憂鬱
「今日のDX会議、議事録お願いね」――経営層からそう言われるたびに、モヤモヤした気持ちを抱えている現場責任者は少なくないはずです。決定権があるわけでもないのに、なぜか会議の記録係やタスクの取りまとめ役だけが自分に回ってくる。発言力のある人たちが方向性を語り、自分はそれをひたすらメモして、あとで各部署に「これやっておいてください」と伝えるだけの役目になっていないでしょうか。
この違和感は、実は「気のせい」でも「自分の立場が弱いから」でもなく、DX推進の会議体そのものが持つ役割の偏りから生まれていることが多いです。経営層は方向性を示す役割、現場責任者は実務に落とし込む役割という分担自体は自然なのですが、その間の「誰が何を決めるか」が整理されないまま会議が進むと、結局手を動かせる人にしわ寄せが集まります。
この記事では、なぜ現場責任者が議事録係・調整役になりやすいのかという背景を整理したうえで、その役回りに感じる違和感の正体を言葉にしていきます。
なぜ現場責任者が「まとめ役」になりやすいのか
DX会議で現場責任者が議事録やタスク管理を任されやすいのには理由があります。経営層は「DXをやる」という意思決定はできても、それを日々の業務にどう落とし込むかという具体の設計まではできないケースが多いためです。結果として、会議の場では方針だけが語られ、「じゃあ誰が何をいつまでにやるか」という実務の整理は、その場に唯一「現場を知っている人」として同席している現場責任者に自然と流れてきます。
さらに厄介なのは、議事録やタスク一覧を作る過程で、実質的な優先順位付けや判断まで現場責任者が担ってしまう点です。「決定事項」として書いたことがそのまま実行計画になり、後から「そんなつもりじゃなかった」と経営層に修正されることもあります。役割としては記録係のはずなのに、気づけば意思決定の下請けのようになっている状況は、押さえておきたいところです。
情報処理推進機構(IPA)が公表している「DX動向」に関する調査でも、経営層と現場のDXに対する意識や関与の度合いに差があることが指摘されており、方針を示す層と実務に落とし込む層の間に距離が生じやすいこと自体は、一社особだけの事情ではなく構造的な傾向として捉えられています。
議事録係が抱える本当のリスクは「言った言わない」
この役回りが厄介なのは、単に負担が増えるということだけではありません。DX推進の初期段階で「誰が何を決めたか」が曖昧なまま進むと、後工程で外部の開発会社やベンダーに発注する段になって、要件があいまいなまま話が進んでしまうリスクにつながります。実際、要件定義とは何か。見積もり前に必要な理由でも触れているとおり、社内の合意形成が曖昧なまま発注に進むと、見積もりの前提が崩れやすくなる傾向があります。DX会議での「決定事項の整理」は、実はそのまま発注時の要件の土台になるため、ここで丁寧に記録しておくことが後々の見積もりトラブルを防ぐことにもつながります。
つまり議事録係という一見地味な役回りは、後工程の要件定義や見積もりの精度に直結する重要な工程を担っていると捉え直すことができます。ここをただの雑務と考えるか、発注準備の一部と考えるかで、後の負担の大きさが変わってきます。
「まとめ役」に感じる違和感をどう捉え直すか
議事録係の立場から抜け出すヒントの一つは、記録の取り方そのものにあります。単に発言を時系列で書き留めるのではなく、会議の最後に「決定事項」「保留事項」「誰がいつまでに何をするか」の3つに分けて整理し、その場で全員に確認を取る形に変えると、記録係が実質的な合意形成の進行役に変わっていきます。
またDX全体の進め方に迷っている場合は、ツール選定や外部発注の話に進む前に、社内の課題を言語化する手順を踏むことが効果的です。この点については「DXやって」と言われたら、まず何から?でも、丸投げされた状況から抜け出すための最初の一歩として整理されていますので、あわせて確認しておくと会議の位置づけそのものを見直すヒントになります。
議事録の書き方や事前のアジェンダ共有は、あくまで一つの手がかりにすぎません。本質的には、「なぜ自分がこの役回りを担っているのか」という背景への理解そのものが、状況を見る目を変えていきます。こうした視点を持っておくだけでも、会議への向き合い方は少しずつ変わってくるかもしれません。
まとめ
DX会議で議事録係や調整役になりがちな現場責任者の悩みは、経営層と現場の役割分担が曖昧なまま会議体が動いていることから生まれる問題です。要点は次の3つです。
- 議事録・タスク整理の役回りは、経営層が具体の設計まで担えないという事情から自然発生しやすい
- その記録内容は後工程の要件定義や見積もりの前提になるため、雑務ではなく発注準備の一部と捉え直せる
- 記録の分類方法やアジェンダの事前共有は一つの手がかりであり、本質は自分の役回りの背景を理解することにある
会議での役割一つとっても、DX推進全体の進め方とつながっています。自分の役回りに違和感があるときほど、その違和感の背景を一度整理してみることが、次の一歩につながるのかもしれません。
執筆
サイバーコネクト編集部
誇張や決めつけを避け、現場で実際に判断材料になる情報だけをお伝えします。
監修
木村 真之
株式会社サイバーコネクト 代表取締役社長
2021年11月に同社を設立。
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